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横須賀市における前立腺がん検診を御紹介します

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はじめに

皆様はPSA検診という言葉を御存知でしょうか?我が国でもようやく広まってきていますので、当院に通院されている50歳以上の男性の方は、横須賀市におけるPSA(前立腺特異抗原)を用いた前立腺がん検診をすでに受けている方もいるかと思います。これはPSAという前立腺の細胞で作られる蛋白質が前立腺がんの患者様で高い値になることを利用した検診です。欧米では既に30年前から行われていて、検診が広く行われると、その地域における転移がんが少なくなることが知られています。特に米国では現在、50歳以上の全男性の実に80%は自分のPSAを知っているといわれています(日本ではまだ10%以下です)。そのため米国の転移がんは発見される前立腺がんの10%以下になっています(日本ではまだ10-30%は転移がんで発見されます,この発見率は地域によって差があります)。転移癌の患者様には内分泌療法(ホルモン療法)という優れた治療法はありますが、それでも5年以内に30-40%の方は亡くなります。

PSA検診論争

2007年の9月9日付で読売新聞の一面トップで発表された「PSA検診は前立腺がん患者の生存される割合に寄与する証拠がないので我が国における対策型検診は勧められない」という厚生労働省の研究班からの報告が掲載されましたが、この記事は明らかに先走りです。真面目に検診を勧めている全国の泌尿器科の診療現場を混乱させました。その後、研究班の疫学者(臨床医ではない)と泌尿器科臨床医の委員との論争に発展し、研究班から泌尿器科学会の代表が脱退するという騒ぎになりました。
その後、米国と欧州から大規模な臨床試験の結果が発表されましたが、それぞれ相反する結果であったためにさらに論争が続きました。米国の試験では検診の効果に否定的な結論であったために米国内ではPSA検診は推奨されないという勧告まで出されましたが、その後米国で行われた試験の致命的欠陥が明らかになり、欧州の大規模な研究などからPSA検診で亡くなられる方の割合が低下しました(14年の観察期間で死亡率を44%も低下させる)。
米国ではすでにPSAが広まりすぎているので検診のメリットは少ないのかもしれませんが、我が国ではまだまだ検診を広めてゆく必要があります。

横須賀市での前立腺がん検診

横須賀市では2001年からPSA単独検診としての前立腺がん検診が医師会、行政の主導でスタートしましたが、同時期に実際に生検を担当する二次検診施設の代表により横須賀市前立腺癌検診研究会が立ち上がりました(当院も参加しています)。
この研究会では横須賀市内で発生した前立腺がんをすべて集計、解析するシステムを立ち上げました。開始から5年目の集計、解析では検診で発見された前立腺がんは検診以外で発見された前立腺がんよりも早期がんが多いことが判明したので、その結果を報告しています(1)。また10年目の解析では発見された前立腺がんの患者様のうち検診を一度でも受けた患者様は受けていない患者様よりも生存される方が多いことが証明されましたので、こちらも報告しています(2)。
さらに、今年から胃癌のリスク検診を参考にしてリスク検診を導入しました。
治療が必要な前立腺がんの患者様を早期に発見して、亡くなられる方の割合をさらに下げることが目的です。
リスク因子として重要な家族歴の導入が始まりました。

家族歴がもっとも強いリスク因子です

前立腺癌では第一度近親者(親、兄弟、子)に1人前立腺癌患者がいると今後前立腺癌が発見されるリスクは、いない人の2倍になり、2人いると5倍、3人いると11倍になるというデータがあります。家族歴があるということは前立腺癌の発生にとってはとても強いリスク因子です。一般的なPSA検診の基準値は4ng/ml未満が正常というものですが、家族歴のある検診受診者は自分のPSAの基礎になる値を知ることができます。毎年のPSAの上昇(一年に0.75ng/ml以上のPSAの上昇は、たとえ4ng/ml未満の値の人でもリスクが高いと言われています)。家族歴のある人は毎年、自分のPSA値をチェックすることが前立腺癌の早期発見につながる可能性が高いです。50歳以上の男性(家族歴のある方は40歳以上)はPSA検診を受けるようにしましょう!

(1)野口純男、里見佳昭、酒井直樹、奥井伸雄、池田滋、小林正喜、福岡洋、古畑哲彦:
横須賀市前立腺癌検診5年間成績(検診と非検診の比較) 泌尿紀要 54:197-201, 2008
(2)Sakai N,Taguri M,Kobayashi K,Noguchi S, Ikeda S, Koh H, Satomi Y,
Furuhata A; Clinical outcome of prostate cancer patients in Yokosuka City, Japan:A comparative study between cases detected by prostate-specific antigen-based screening in Yoksuka and those detected by other means.
Int.J.Urol. 22(8)747-752,2015